コンサルタントとはクライアント企業の経営課題を特定し、解決のための戦略の立案・実行のサポートをすることで企業の成長を支援する職業です。
しかし、世の中にはコンサルタントと名のつく職業がたくさんあり、「いまいち何をしているかよく分からない」と思う人は多いことでしょう。本記事ではコンサルタントが具体的にどのような仕事を行っているかを詳しく解説します。
さらに、コンサルタントに向いている人の特徴や目指すための具体的なステップについても現役のコンサルタント視点で解説していきます。
「自分にコンサルタントが向いているのか?」「どうすればこのキャリアを実現できるのか?」そんな疑問を持つ方は是非チェックしてみてください。

この記事の監修者
保知 一也
Acrosstudio株式会社 代表
KPMGコンサルティングを経て、Acrosstudio株式会社を創業。2023年10月に、コンサルティング事業とフリーコンサルへの案件仲介事業を立ち上げ、生成AI領域への事業を拡大。2025年1月時点で正社員数27名・今期売上6億円着地予定。

この記事の執筆者
Acrosstudio株式会社
コンサル総研編集部
Acrosstudio株式会社所属の現役コンサルタントがコンサル総研編集部として記事の執筆・編集を行う。これまでのコンサルでの実務経験を元に読者の皆様へコンサル業界のリアルを発信することを心がけている。
そもそもコンサルタントとは?概要を簡単に解説
コンサルタントは、クライアント企業や組織の経営上の課題を特定し、解決するために様々な支援を行う職業です。
経営戦略を立案・提言するだけでなく、近年は実際にコンサルタント自身が実行まで担い、課題解決のために伴走することが主流となっています。
また、コンサルタントが支援を行う領域は、戦略・人事・IT・業務改善など多岐に渡り、領域ごとに支援内容は異なります。どの領域でも共通していることは、論理的思考力でクライアント企業が抱える課題の本質を見抜き、実現可能な解決策を提示・実行し、企業の成長をサポートすることです。
しかし、コンサルタントに依頼する企業は自社で解決することができないため、外部のコンサルタントに依頼をしているため、仕事の難易度やプレッシャーが大きい点も特徴です。
その分、課題を解決できクライアント企業から感謝されることによるやりがいや報酬の高さなど魅力的なことも多いため人気の職業となっています。
コンサルタントの種類と仕事内容を紹介
コンサルタントには様々な種類があり、それぞれ専門とする分野や役割が異なります。以下に主代表的なコンサルタントの種類とその仕事内容を紹介します。
戦略コンサルタント
戦略コンサルタントは、企業の経営陣が直面するさまざまな課題に対し、客観的かつ専門的な視点から最適な解決策を提案する役割を担います。
- 主な業務:新規事業戦略の策定、既存事業の改善、経営陣の意思決定支援
- 特徴:外部の視点から柔軟かつ斬新なアイデアを提供
- 近年の傾向:戦略立案だけでなく、実行支援まで行うケースが増加
新規事業の戦略をクライアントとともに策定することや、既存事業の改善や立て直しの方向性を示すことが含まれます。外部の立場だからこそ可能な柔軟で斬新なアイデアを提供し、経営陣の意思決定を支援することが求められます。
近年では、単なる戦略の立案にとどまらず、実行支援まで行うケースが増えています。これは、戦略を現場に浸透させ、具体的な成果を上げるためには、計画段階だけでなく実行フェーズでも伴走する必要があると認識されてきたためです。たとえば、戦略に基づく組織体制の再構築や、新規事業の試験運用を通じて課題を解決に導く取り組みも行われています。
経営コンサルタント
経営コンサルタントは、企業の業務運営や組織全体の改善を支援します。
- 主な業務:業務フローの改善、コスト削減、組織改革
- 特徴:現場との連携を重視し、実現可能な改善策を立案
- 近年の傾向:サステナビリティや働き方改革に関するコンサルティングも増加
業務フローの可視化を通じた非効率な部分の洗い出しや、コスト構造の再設計などがあります。また、現場の従業員との密な連携を通じて、実現可能な改善策を立案し、企業全体のパフォーマンス向上を目指します。
近年では、業績向上や生産性改善だけでなく、サステナビリティや従業員の働き方改革に関するコンサルティングも求められるケースが増えています。これにより、経営コンサルタントの役割はより複雑化し、多岐にわたる専門性が必要とされています。
IT(システム導入)コンサルタント
ITコンサルタントは、情報技術を活用した業務効率化と競争力強化を支援します。
- 主な業務:ERPやCRMなどの業務システム導入、デジタル化推進
- 特徴:業務プロセスの分析、最適なシステム選定、導入から運用までを管理
- ポイント:システム導入だけでなく、カスタマイズや従業員トレーニングも実施
現状の業務プロセスを分析し、最適なシステムを選定。要件定義から導入、運用までの全フェーズを管理します。例えば、製造業では生産計画と在庫管理を統合するシステムの導入を通じて、業務全体の効率化を図ることがよくあります。
また、単にシステムを導入するだけでなく、企業文化や現場の実情に合わせたカスタマイズや、従業員へのトレーニングも重要な業務の一環です。
SAPコンサルタント
SAPコンサルタントは、SAPシステムの導入と運用を支援します。
- SAP:企業の主要業務を一元管理するERPシステム
- 主な業務:SAPシステムのカスタマイズ、導入、運用支援
- 効果:情報共有の円滑化、業務効率の向上、経営判断の迅速化
SAPとは、ドイツ発祥のソフトウェア企業が提供するERP(Enterprise Resource Planning)システムのことで、財務管理、在庫管理、販売管理など、企業の主要な業務を一元管理するツールを指します。
このシステムを導入することで、企業内の情報共有がスムーズになり、効率的な業務運営が可能となります。SAPコンサルタントの主な役割は、このシステムを企業の業務に合わせてカスタマイズし、導入後の運用を支援することです。
例えば、製造業では生産計画から在庫管理までの流れを統合する仕組みを構築し、在庫コストを削減する一方で、納期の遵守率を向上させるといった具体的な成果を生み出します。また、財務や販売など各部門間のデータ連携を強化することで、経営判断の迅速化にも寄与します。
SAPは多機能であるため、専門的な知識と経験が必要とされますが、企業が直面する課題を解決する強力なツールとして活用されています。
PMOコンサルタント
PMOコンサルタントは、プロジェクトの計画から実行までを管理し、成功に導きます。
- 主な業務:スケジュール・予算管理、関係者との調整、進捗管理
- 特徴:リスク管理、コミュニケーション体制の構築
- 役割:大規模プロジェクトや複雑なプロジェクトで不可欠
業務内容には、スケジュールや予算の管理、関係者間の調整、進行状況の可視化などがあります。また、リスクを事前に洗い出し、適切な対応策を講じることで、プロジェクトの成功率を高める役割を果たします。
特に大規模プロジェクトや複数チームが関与する複雑な案件では、PMOコンサルタントの存在が不可欠です。効率的なコミュニケーションの仕組みを構築し、関係者全員がスムーズにプロジェクトを遂行できるよう支援します。
コンサルティングファームの種類
コンサルティングファームは、専門分野やサービスによって種類が異なります。
- 戦略系/M&A系:経営戦略、M&Aに特化
- 総合系:幅広い分野に対応
- 財務会計系(FAS):財務会計に関する課題解決
- 人事・組織系:人材、組織に関する課題解決
- ブティック系:特定の業界や分野に特化
戦略系/M&A系コンサルファーム
戦略系コンサルファームは、企業の経営課題を解決するために、戦略立案から実行支援までを包括的にサポートするのが特徴です。主な業務には、新規事業の企画、収益モデルの見直し、グローバル市場への進出支援などが含まれます。経営陣と直接協働し、企業が持続可能な成長を遂げるための具体的な道筋を示します。
さらに、M&Aの分野では、買収ターゲットの選定から統合後の課題解決までを担当します。たとえば、買収先企業の文化や業務プロセスの統合を円滑に進めることで、リスクを最小限に抑えつつ、最大限のシナジーを引き出します。これらの業務を通じて、企業が競争力を高め、複雑化する市場環境に対応できるよう支援します。
代表的なファームには、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイン&カンパニーなどがあり、いずれも高い専門性を誇ります。
総合系コンサルファーム
総合系コンサルファームは、戦略から業務改善、IT導入、財務、人材管理に至るまで幅広い分野に対応するのが特徴です。1つのプロジェクト内で異なる分野の専門家が連携することで、課題に対して多角的なアプローチを提供します。
たとえば、デジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトでは、戦略立案だけでなく、具体的なシステム導入や業務プロセス改革まで一貫してサポートします。さらに、現場レベルの細かな改善提案を通じて、組織全体の効率化を目指します。
この種のファームには、アクセンチュアやデロイト トーマツ コンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティングなどが含まれます。それぞれ、業界を横断した幅広い知見と強力な実行力を持っています。
財務会計系コンサルティングファーム/FAS
財務会計系コンサルティングファームは、企業の財務に関する課題解決に特化しています。財務戦略の立案、資金調達支援、M&Aのデューデリジェンス、企業価値評価などが主な業務です。これらを通じて、企業が財務基盤を強化し、持続可能な成長を実現できるよう支援します。
具体的な業務例としては、リスク管理体制の構築、資本構成の最適化、M&A後の財務統合があります。特にM&Aでは、買収対象企業の財務状況を詳細に分析し、潜在的なリスクを特定することで、経営陣の意思決定をサポートします。
代表的なファームには、KPMG FASやデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーがあります。これらのファームは、財務に関する専門的な知識を駆使し、クライアントの信頼を得ています。
人事・組織系コンサルティングファーム
人事・組織系コンサルティングファームは、企業が抱える人材や組織に関する課題を解決します。主に、人事制度の設計、組織改革、リーダーシップ開発、従業員のエンゲージメント向上プログラムの導入を担当します。
企業が持続的に成長するためには、適切な人材配置と組織体制が不可欠です。たとえば、企業が抱える離職率の課題に対しては、職場環境の改善やキャリアパスの明確化を提案し、従業員の満足度を向上させます。また、採用戦略の見直しを通じて、必要なスキルを持つ人材の確保を支援します。
リンクアンドモチベーションやマーサーなどがこの分野で知られており、それぞれ人事分野に特化した高い専門性を提供しています。
ブティック系コンサルファーム
ブティック系コンサルファームは、特定の業界や分野に特化したコンサルティングサービスを提供する小規模なファームです。規模は小さいものの、専門性が高く、迅速かつ柔軟な対応力を持っています。
医療業界やIT分野に特化したファームでは、その業界特有の課題に深く精通しており、クライアントに対して最適な解決策を提示します。また、特定の業界に強みを持つことで、大手ファームでは得られない詳細な市場情報を提供することが可能です。
ブティック系ファームは、小規模であるがゆえにクライアントとの距離が近く、きめ細やかなサポートを提供できる点が魅力です。
コンサルタントの役職
コンサルティング業界には、様々な役職が存在し、役職によって求められる能力や役割が異なります。
主に以下のような役職の階層があります。
- コンサルタント
- シニアコンサルタント
- マネージャー
- シニアマネージャー
- プリンシパル(ディレクター)
- パートナー
それぞれの役職に関して、具体的にどのような役割や業務内容かを解説していきます。
コンサルタントの役職について、専門的に詳しく解説している記事もあるので、より詳細にチェックしたい人はこちらも見てみてください。
コンサルタントの役職一覧と仕事内容を紹介!キャリアアップの全体像を解説
コンサルタント
コンサルタントは、プロジェクトの基礎的な業務を担当し、データ収集や分析を通じて課題解決を支援します。このポジションは、チームの指示のもとタスクを遂行し、成果物作成に直接貢献することが求められます。
主な業務として、市場データや顧客情報のリサーチを実施し、提案資料や分析レポートの作成を行います。また、プロジェクト全体の進捗を支える形で、チーム内の他メンバーと協力しながら効率的にタスクをこなします。業務を通じて、ロジカルシンキングや基礎的なビジネススキルを磨く段階です。
シニアコンサルタント
シニアコンサルタントは、プロジェクトの一部をリードし、実務的な業務と管理業務を兼ね備えたポジションです。クライアントとの直接的なコミュニケーションを通じ、ニーズを深く理解し、実現可能な解決策を構築します。
具体的には、リサーチ結果を基に高度なデータ分析を行い、提案書を形にする役割を果たします。さらに、後輩コンサルタントの指導を担当し、チーム全体の成果を引き上げる責任を担います。プロジェクトの部分的な責任者として、実務スキルだけでなく、チームマネジメントやコミュニケーション能力の向上が求められます。
マネージャー
マネージャーは、プロジェクト全体を統括する責任者として、戦略策定から実行支援までを主導します。クライアントとの関係構築を深めると同時に、プロジェクトの進行状況を管理し、チームのパフォーマンスを最大化する役割を担います。
具体的な業務では、リソース配分やスケジュール調整を行い、クライアントへの提案内容を承認・最適化します。また、課題解決のプロセスをリードし、プロジェクトが目標を達成できるよう、戦略的な意思決定を下します。クライアントの信頼を得ながら、複数の利害関係者を調整する能力が求められる段階です。
シニアマネージャー
シニアマネージャーは、マネージャーを監督しつつ、複数のプロジェクトを統括します。クライアントの経営陣と直接協議を重ね、より長期的かつ包括的な課題解決に取り組む責任があります。
この役職では、チームの成果を最大化するための高い判断力が必要です。また、新規案件の発掘や提案活動にも深く関与し、組織全体の収益向上を目指します。部下の育成や業務効率の向上といった内部的な貢献も評価基準となります。
プリンシパル(ディレクター)
プリンシパルは、シニアマネージャーとパートナーの間に位置する役職で、重要なクライアントアカウントの責任者として働きます。収益目標の達成を目指すと同時に、ファーム全体の成長戦略にも携わります。
主な役割は、クライアントとの長期的な関係構築と、大規模プロジェクトの全体的な統括です。また、次世代のリーダー育成や新しい市場の開拓にも注力します。このポジションでは、ビジネスに対する深い洞察力と、経営視点での意思決定力が重要です。
パートナー
パートナーは、コンサルティングファーム全体の経営を担う最上位の役職です。クライアントの経営陣と対等な立場で議論を交わし、ビジネス全体の方向性を形作るリーダーとして活躍します。
具体的には、ファーム全体の収益計画や戦略を策定し、新規クライアントの開拓や既存顧客との関係強化に取り組みます。また、若手コンサルタントの育成や、組織文化の形成にも責任を負います。このポジションでは、業界全体の動向を把握しながら、クライアントの持続的な成長を支援する能力が求められます。
コンサルタントに向いている人
コンサルタントに向いているのは、課題解決を楽しめる人です。
- 論理的思考力、実行力、忍耐力
- 知的好奇心、数字と物語で語る力
- チームで成果を出すことにこだわる姿勢
目の前の問題だけでなく、その背後にある構造的な原因や未来のリスクまで視野に入れ、論理的に整理しながら突破口を見つける。こうしたプロセスにやりがいを感じられる人が活躍します。
また、現場は常に変化の連続です。時には、クライアントから「これ、本当にできるの?」と聞かれるような無理難題に直面することもあります。それでも怯まず、仮説を立てて小さな成功を積み重ねる実行力と忍耐力が必要です。このような環境で、日々新しい視点を吸収しながら成長していける「知的好奇心」の旺盛さが大きな武器になります。
さらに、コンサルタントには「数字を語れる力」と「物語を紡ぐ力」が求められます。膨大なデータから意味を見出し、それを単なる分析結果としてではなく、クライアントの経営に響く形で伝える能力が不可欠です。特に経営層との会話では、理屈だけではなく、彼らが直面する感情や現場感覚を理解した上での提案が求められます。
もう一つ欠かせないのは、チームで成果を出すことにこだわる姿勢です。コンサルタントは一人で完結する仕事ではありません。チーム内での役割分担や意思疎通が鍵となり、異なる意見やバックグラウンドを持つメンバーと協力して解決策を形にしていきます。
つまり、コンサルタントに向いているのは、「頭を動かす楽しさ」と「チームで成果を出す達成感」を両方追求できる人と言えるでしょう。
コンサルタントになるには?
コンサルタントになるためには、専門知識と実務経験が必要です。
- ビジネス、IT、経済学などの知識
- プロジェクト管理、データ分析などのスキル
- インターンシップやトレーニングプログラムの活用
- 継続学習と柔軟性
まず、業界や分野に関する深い知識を身につけることが基盤となります。これには、ビジネス、IT、経済学などの学びを通じて論理的思考や課題解決の基本を鍛えることが含まれます。
一方で、実務経験は不可欠です。プロジェクト管理やデータ分析など、現場で役立つスキルを磨くことで、コンサルタントとしての土台が固まります。特に、チームでの連携やクライアントとの折衝を通じて、理論を実践に変える能力が求められます。
さらに、コンサルティングファームではインターンシップやトレーニングプログラムを通じて、実際の業務に触れる機会が提供されています。こうした場を活用することで、課題解決のプロセスを体験し、即戦力としてのスキルを養うことができます。
コンサルタントを目指す道は一つではありませんが、共通して求められるのは「継続して学び続ける姿勢」と「多様な視点を受け入れる柔軟性」です。この二つを意識することで、目標に向けた確かなステップを踏むことができます。
まとめ
コンサルタントは、企業の成長や問題解決に不可欠な存在です。様々な種類のコンサルタントやコンサルティングファームが存在し、それぞれが異なる役割を担っています。自身の適性や興味を考慮し、最適なキャリアパスを選ぶことが重要です。
コンサルタントを目指す方は、まずは基礎的な知識やスキルを身につけ、その上で実務経験を積むことで、専門的な能力を高めていくことが求められます。
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