戦略コンサルタントは、企業の経営課題を分析し、成長戦略を提案・実行する専門家です。
「経営層と直接対話できる」「短期間で大きく成長できる」「高収入を狙える」など、魅力的なポイントが多い仕事です。
しかし一方では、ハードワーク・高いスキル要求・強いプレッシャー など、厳しさも伴います。
そこでこの記事では、戦略コンサルタントの仕事内容や必要なスキルを詳しくまとめました。
「自分に戦略コンサルは向いているのか?」と悩んでいる人が判断できるよう、具体的な情報をお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
戦略コンサルタントの仕事内容
戦略コンサルタントの主な役割は、クライアント企業の経営課題を解決し、成長を支援することです。
具体的には、以下の3つの業務に分類されます。
- 戦略立案
⇒企業の成長戦略を設計する - デューデリジェンス(DD)
⇒企業買収の際に対象企業の価値やリスクを評価する - オペレーション支援
⇒業務プロセスを改善し、効率化を図る
戦略立案
戦略立案とは、企業の競争力向上や成長を目的とした中長期的な戦略を設計する業務です。
例えば新規市場への参入を検討している企業に対し、競争環境を分析し、最適なアプローチを提案します。
【戦略立案のプロセス】
- 業界分析や財務データを用いて企業の課題を特定する
- 成長戦略の選択肢を複数検討し、評価する
- クライアントの経営層に向けてプレゼンする
現状分析・課題抽出の場面では、競合企業の市場シェアを分析し、自社の強み・弱みを整理します。
海外進出や新規事業開発などのシナリオを比較した後、具体的なKPIと実行計画を提示し、意思決定をサポートする流れです。
企業の未来を左右する重要な業務のため、市場環境を正しく理解し、最適な戦略を提案する力が求められます。
DD
デューデリジェンス(DD)は、M&A(企業買収・合併)を行う際に、対象企業の価値やリスクを評価するプロセスです。
例えば、大手企業がスタートアップを買収する場合、その企業の財務状況や市場競争力を詳細に分析します。
【DDのプロセス】
- 財務諸表を分析し、収益性やリスクを評価する
- 事業の競争力や市場成長性を評価する
- 買収における潜在リスクを整理する
財務DDでは、売上成長率・利益率・キャッシュフローを分析します。
ビジネスDDの場面では、競合と比較し、ビジネスモデルの優位性を確認します。
失敗しないためにも、法規制・技術トレンド・市場縮小リスクの検討が必要です。
M&Aの成功を左右する重要なプロセスのため、財務や市場のデータを基に、企業の価値とリスクを適切に評価する力が求められます。
オペレーション支援
オペレーション支援とは、企業の業務プロセスを改善し、生産性向上を図る業務です。
例えばメーカーが生産コストを削減したい場合、業務フローを分析し、無駄を省く施策を提案します。
【オペレーション支援のプロセス】
- 現場の業務フローを可視化し、非効率な部分を特定する
- 業務の自動化・アウトソーシングなどの施策を検討する
- 施策の成果を定量的に評価し、改善点を見直す
生産ラインのボトルネックを洗い出し、作業時間短縮を提案します。
またコスト削減率や生産性向上率を分析し、効果を測定する工程も重要です。
企業の生産性向上に直結するため、データ分析と実行力を兼ね備え、クライアントと協力しながら成果を生み出すことが求められます。
戦略コンサルタントの特徴
戦略コンサルタントは、企業の経営課題を解決し、成長戦略を描くプロフェッショナルです。
経営層と直接やり取りしながら、大規模なプロジェクトを推進するため、高い専門性とスキルが求められます。
この職業には、大きなやりがいや魅力がある一方で、高度なスキルとタフな働き方が求められる厳しさもあります。
戦略コンサルタントの魅力・やりがい
戦略コンサルタントの魅力・やりがいとして挙げられるポイントは以下の通りです。
- キャリアの成長スピードが速い
- 社会的インパクトが大きい仕事
- 高収入と市場価値の高さ
若手のうちから経営層と直接議論し、意思決定に関わる経験を積めるため、成長スピードが非常に速いです。
クライアント企業の変革を支援するため、その影響が業界全体に広がることもあります。
自分の提案が実際の経営に影響を与えるので、企業成長を支える実感が得られるでしょう。
また戦略コンサルタントは市場価値が高いため、高い報酬が期待できる職業の一つです。
高収入だけでなく、コンサル経験を活かして多彩なキャリアパスを描けるのも魅力でしょう。
※年収やキャリアパスについて詳しくは後述しています。
戦略コンサルタントの厳しさ
戦略コンサルタントは華やかに見えますが、厳しさもあり、代表的なものは以下の通りです。
- 長時間労働が常態化する
- プレッシャーが大きい
戦略コンサルタントの仕事は、プロジェクト単位で進められるため、締切前は深夜まで働くことも珍しくありません。
例えば、海外案件の場合、時差の関係で深夜や早朝に会議が入ることもあります。
タスク管理能力と、長時間労働に耐えうる体力が必要です。
また、クライアントの経営層と議論するため、常に高いレベルのアウトプットが求められます。
厳しいフィードバックを受けることもあるので、ストレス耐性や精神的な強さが重要です。
戦略コンサルタントに向いている人
戦略コンサルタントは、企業の成長戦略を支援し、ビジネスの最前線で活躍する仕事です。
しかし、誰にでも向いているわけではなく、特定のスキルや適性が求められます。
以下のような特徴を持つ人は、戦略コンサルタントとして成功しやすいと言えます。
- 論理的思考力がある
- 高い学習意欲と知的好奇心を持っている
- ストレス耐性とタフな精神力がある
- コミュニケーション能力が高い
- プロジェクトマネジメントが得意
※これらのスキルが必要な理由については後述しています。
戦略コンサルタントに興味がある人は、上記の特徴にどれだけ当てはまるか自己分析してみてください。
多くの項目が当てはまる場合は、戦略コンサルタントとしての適性が高く、挑戦する価値があります。
一方でほとんど当てはまらない場合は、他のキャリアも視野に入れ、自分に合った道を模索しましょう。
戦略コンサルタントに必要なスキル
以下では、戦略コンサルタントに不可欠なスキルをまとめました。
戦略コンサルタントは企業の経営課題を解決し、成長戦略を描く仕事です。
専門知識や経験以外に、本質的なスキルも身に着ける必要があります。
論理的思考力
戦略コンサルタントとして活躍するためには、論理的思考力(ロジカルシンキング) が欠かせません。
クライアントの課題を整理し、最適な解決策を導くためには、「何が問題なのか?」「どのように解決できるのか?」を構造的に考える力が求められます。
論理的思考力が求められる場面
- 経営課題の分析
- 戦略の立案
- プレゼンテーション
例えば、売上が低迷している企業の要因を市場価値や競争戦略という視点から分析することで、的確な改善策を導き出せます。
感覚や経験則ではなく、データをもとに合理的な意思決定を行うことが重要です。
また経営層やクライアントを納得させるためには、シンプルかつ論理的に提案を構築するスキルも求められます。
戦略コンサルタントとして論理的思考を磨くには、以下の習慣を意識すると効果的です。
- フレームワークを活用する
- ファクトベースで考える
- 結論から伝える
日々の思考習慣から、物事を論理的に整理するクセをつけることで、コンサルタントとしてのスキルを磨いていきましょう。
忍耐力
戦略コンサルタントの仕事は、長時間労働・高いプレッシャー・タイトな納期という過酷な環境の中で進められます。
肉体的にも精神的にもタフであることが求められるため、厳しい状況を乗り越える忍耐力も不可欠な要素です。
忍耐力が試される場面
- タイトな納期のプレッシャー
- 厳しいフィードバックへの対応
- 高い要求水準に応える
短期間で膨大な資料を作成する必要があり、例えば1週間で100ページのプレゼン資料を作成するといった状況が発生します。
クライアントや上司からの指摘を素直に受け入れ、迅速に改善する力も重要です。
プレゼン後に「やり直し」と言われ、徹夜で修正することも珍しくありません。
また、一言一句ミスのないレポートを作成するなど、細部へのこだわりも欠かせません。
戦略コンサルタントとして活躍するために、以下の習慣を意識すると良いでしょう。
- 長時間集中する訓練をする
- プレッシャーの中でも冷静に対応する習慣をつける
- 「困難を乗り越えた先に成長がある」と考える
戦略コンサルタントの仕事は厳しいですが、その分、成長できる環境が整っています。
忍耐力を鍛え、プレッシャーの中でも成果を出せるプロフェッショナルを目指しましょう。
コミュニケーション能力
戦略コンサルタントの仕事は、クライアント・チームメンバー・経営層との対話を通じてプロジェクトを推進することです。
ただ情報を伝えるだけでなく、「相手を納得させる伝え方」「本質的な課題を引き出す力」 が求められます。
高度なコミュニケーションスキルなしでは、効果的な戦略提案は実現できません。
コミュニケーション能力が求められる場面
- クライアントとのヒアリング
- チーム内での議論
- プレゼンテーション
経営層とのミーティングでは「現在の課題は何か?」という表面的な問いではなく、「この課題を解決することで、どのようなビジネス成果を期待しているのか?」と深掘りすることで、本当に解決すべき課題を明確にできます。
またコンサルタントは短時間で的確に意見を伝える必要があります。
理解と納得を得やすくするためにも、相手の立場に応じて、伝え方を変えることも重要です。
戦略コンサルタントとしてのコミュニケーション能力を鍛えるには、以下のポイントを意識しましょう。
- 「結論→理由→具体例」の順で話す習慣をつける
- 相手のニーズを理解し、伝え方を柔軟に変える
- フィードバックを素直に受け入れ、改善する姿勢を持つ
的確なヒアリング・論理的な議論・状況に応じたプレゼンテーションを磨くことで、より影響力のあるコンサルタントを目指しましょう。
戦略コンサルタントにおすすめの資格
前提として、戦略コンサルタントに必須の資格はありません。
ただ以下のような、戦略立案・財務分析・データ活用に直結する資格を取得すると、キャリアの幅を広げる可能性が高まります。
資格 | 概要 | おすすめな人 |
---|---|---|
MBA(経営学修士) | 経営戦略・財務・マーケティングなど、総合的なビジネススキルを習得できる | 経営戦略や事業開発を強化したい人 |
PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル) | プロジェクト管理能力を証明し、実務でのマネジメントスキルを向上させる | 大規模プロジェクトの管理・推進を強化したい人 |
中小企業診断士 | 日本国内の企業経営に関する知識を体系的に学べる唯一の国家資格 | 経営企画や事業開発への転職を考えている人 |
USCPA(米国公認会計士) | 財務・会計の国際的な資格で、M&Aや投資案件に強くなる | 財務分析・M&A案件に強くなりたい人 |
簿記検定(2級以上) | 財務諸表の分析や経営管理の基礎を学び、データを用いた戦略立案 | DX案件・データ活用を強化したい人 |
Pythonデータ分析試験 | データ分析スキルを証明し、データドリブンな戦略立案を可能 | データドリブンな意思決定を行いたい人 |
また資格は知識の証明にはなりますが、それだけで戦略コンサルタントとして活躍するのは難しいです。
実際のプロジェクトでは資格で得た知識を実務に落とし込む力が求められるため、ケーススタディを解いたり、プロジェクト経験を積みましょう。
戦略コンサルタントの年収
戦略コンサルの年収は、「ファームの種類」や「ポジション(役職)」によって異なります。
日系ファーム (年収) | 外資系ファーム (年収) | |
---|---|---|
アナリスト (新卒〜2年目) | 500万〜800万円 | 800万〜1,200万円 |
コンサルタント (3〜5年目) | 800万〜1,200万円 | 1,200万〜1,800万円 |
マネージャー (5〜8年目) | 1,200万〜1,800万円 | 1,800万〜3,000万円 |
パートナー (8年目以上) | 2,000万〜3,500万円 | 3,000万〜5,000万円以上 |
※企業により異なるため目安としてご確認ください。
マッキンゼーやBCGなどの外資系ファームは、成果次第で20代で年収1,500万円以上を目指すことも可能です。
対する日系ファームは、外資系に比べると給与水準はやや低めですが、安定したキャリアパスを築きやすい特徴があります。
また昇進とは別に、プロジェクトの成功実績を積むことで、評価を上げてボーナス額を増やすこともできるでしょう。
戦略コンサルタントのキャリアパス
戦略コンサルタントのキャリアは、大きく分けて以下の2つがあります。
- 社内昇進ルート
- 転職・独立ルート
社内昇進ルートは、戦略コンサルタントとして長く働き、以下の順序で昇進するルートです。
- アナリスト
=データ分析・市場調査・資料作成を行う - コンサルタント
=クライアント対応・戦略立案・プレゼンを担当 - マネージャー
=複数のプロジェクトを管理し、チームを指揮する - パートナー
=経営層との交渉・新規案件獲得を担う
前述した通り、昇進するほど年収も大幅に上がります。
コンサルティング業界で「長期的にキャリアを築きたい」「経営層との交渉スキルや営業力を磨きたい」人に向いている選択肢です。
対する転職・独立ルートは、 事業会社・投資ファンド・起業などの道に進みます。
主な役職・ポジション | 特徴 | |
---|---|---|
事業会社 | 経営戦略部門・CxO | 安定した環境で戦略立案の経験を活かせる |
投資ファンド | 投資先企業の成長支援 | M&Aや投資案件に携われる、高収入 |
起業 | 自分でビジネスを立ち上げる | コンサルの経験を活かし、自分の事業を作る |
転職・独立ルートは「事業会社で経営に関わりたい」「独立志向が強い」人に向いてます。
戦略コンサルタントは多様なキャリアの選択肢があるため、安定・高収入・独立など、どの道を選ぶか考えましょう。
戦略コンサルタントに関してよくある質問
以下では、戦略コンサルタントに関してよくある質問をまとめました。
上記の疑問がある人は、事前に解消した上で検討しましょう。
戦略コンサルタントと他のコンサルタントの違いは?
以下では、戦略コンサルタントと他のコンサルタントの違いをまとめました。
戦略コンサルタント | 他のコンサルタント | |
---|---|---|
支援領域 | ・新規事業参入 ・M&A戦略 ・海外展開戦略 ・事業再編 ・全社変革 | ・IT:システム導入、DX推進業務、プロセス改善効率化 ・人事:制度設計、組織開発 ・財務:財務戦略、コスト管理 |
クライアント | ・CEO ・取締役会メンバー ・経営企画部門 | ・各部門の部長クラス ・実務責任者 ・現場担当者 |
プロジェクトの期間 | 3~6カ月程度の短期集中型 | 半年~数年の長期支援型 |
プロジェクトの特徴 | ・経営判断に直結 ・高度な分析が必要 ・報酬単価が高い | ・具体的な業務改善 ・段階的な実行支援 ・比較的リーズナブルな報酬 |
戦略コンサルタントは、企業の未来を左右する重要な経営判断に関与し、より広い視野と高度な判断力が求められます。
一方で、他のコンサルタントは各専門分野での具体的な課題解決に重点を置いており、それぞれが企業の発展に不可欠な役割を担っています。
未経験でも戦略コンサルタントになることは可能?
結論、未経験から戦略コンサルタントに転職するのは極めて困難です。
戦略コンサルは、即戦力が求められる職業であり、企業側が未経験者を採用するメリットがないためです。
MBA経由で転職する人もいますが、ビジネス経験や財務知識を習得しているため、未経験とは言えません。
完全な未経験のまま挑戦するのは非現実的なため、ITコンサルや経営企画などを経由してステップアップする順序で目指しましょう。
戦略コンサルタントの仕事内容を理解した上でキャリアチェンジを検討しよう
戦略コンサルタントは、高収入・ハイキャリアを実現できる職業ですが、その分求められるスキルや業務の厳しさもあります。
戦略コンサルタントに転職すべきか迷っている人は、以下どちらに当てはまるかを確認してみましょう。
戦略コンサルタントに 向いている人 | ・ロジカルシンキングが得意 ・ハードワークに耐えられる ・経営層と直接議論したい |
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戦略コンサルタントに 向いていない人 | ・安定した環境で働きたい ・長時間労働を避けたい ・現場業務に興味がある |
もし「戦略コンサルに向いている」と思ったら、次のステップとしてスキル習得や転職準備を進めていきましょう。