「コンサルタントとして活躍するには資格が必要なのか?」や「どの資格がキャリアアップや転職に役立つのか?」と悩む方は多いのではないでしょうか。
コンサルタントの仕事では、課題解決力や専門知識が求められる一方で、必ずしも資格が必要とは限りません。しかし、資格を取得することで、自身のスキルを明確に示し、クライアントや企業からの信頼を得ることが可能になります。
この記事では、コンサルタントとしてのキャリアアップや転職、独立を目指す方に向けて、役立つ資格を目的別に詳しく紹介します。あなたの目指す方向性に合った資格を見つけ、ステップアップのきっかけにしてください。
- 資格は必須ではないが、専門性を証明し信頼性を高める手段になる
- 目的別におすすめの資格を紹介(昇進、転職、独立など)
- キャリアの方向性に応じた資格選びのポイントを解説
- 資格を活かしてコンサルタントとしての市場価値を高める方法を提案
この記事の監修者
保知 一也
Acrosstudio株式会社 代表
KPMGコンサルティングを経て、Acrosstudio株式会社を創業。事業立ち上げ1年で売上3億円・社員数25名まで事業を拡大。前職におけるSaaS導入支援の経験を基に、SaaS事業のクライアントに対してコンサルティング・組織組成・アジャイル開発・BPO等を専門に支援。
この記事の執筆者
Acrosstudio株式会社
コンサル総研編集部
Acrosstudio株式会社所属の現役コンサルタントがコンサル総研編集部として記事の執筆・編集を行う。これまでのコンサルでの実務経験を元に読者の皆様へコンサル業界のリアルを発信することを心がけている。
コンサルタントには必ずしも資格は必要なわけではない
コンサルタントの仕事とは、クライアント企業が抱える課題を解決する仕事であるため、クライアント以上の専門知識や課題解決能力・リソースや対応能力・経験値などが必要となる仕事です。発生する報酬が高額な傾向がある分、自分自身が価値提供をできる何かを持っていることは必須です。
専門知識=資格とは限らず、資格がなくてもそれに相当する知識や経験があれば十分に成功できる職業です。ただし、資格を取得することで信頼性を高めたり、キャリアの選択肢を広げたりできるメリットがあります。実際に資格がなくても成功しているコンサルタントは多くいます。特に、経営コンサルタントやITコンサルタントの分野では、資格の有無以上にクライアントとの関係構築をして案件獲得に繋げたり、プロジェクトを成功に導いた実績などが評価されることが一般的です。現場での具体的な課題解決能力や、柔軟な対応力が資格以上に求められるケースも少なくありません。
コンサルティングという無形商材を扱っている・企業が支払う報酬が高額な傾向が高いため、他業種よりも実績主義であるということは常に念頭に置いておきましょう。ただし、資格の保有により、一定水準以上の知識があるということの手っ取り早い証明になるので、新規のプロジェクトに参画する際に信頼を得られやすかったり、転職・独立の際に自分の専門分野や得意領域を明確に示して理想のキャリアプランを実現するための後押しとなるというメリットがあります。
中小企業診断士やPMP(プロジェクトマネジメント資格)のように、特定の分野で役立つ資格が存在します。これらの資格を持つことは、知識を体系的に学び、クライアントへの信頼感を強化することが可能なため、特に未経験からコンサルティング業界に挑戦する場合に、業界の門戸を開く助けとなるでしょう。
資格の有無にかかわらず、最も重要なのは自分の得意分野を明確にし、その分野で価値を提供する力です。コンサルタントとしてキャリアアップを目指す際には、資格取得だけでなく、業界知識や実践的なスキルを磨くことが欠かせません。資格を選ぶ際には、自分の目指す方向性やキャリアプランに沿ったものを慎重に検討することが重要です。
コンサルタントにおすすめの資格
コンサルタントとしてのキャリアを磨く上で、資格の取得は強力な武器となります。資格は単なる知識の証明にとどまらず、クライアントからの信頼を得る鍵となり、新たな案件の獲得やキャリアの選択肢を広げる役割を果たします。
また、それぞれの資格がカバーする専門分野に応じて、得られるスキルや知識も異なり、自分に合った分野を見つけるきっかけにもなるでしょう。ここでは、コンサルタントにとって特に有益とされる資格を紹介し、それぞれの活用方法について解説します。
MBA(経営学修士号)
社会保険労務士
中小企業診断士
行政書士
税理士
公認会計士
証券アナリスト
司法書士
MBA(経営学修士号)
MBAは正確には資格ではなく「経営学修士」と呼ばれる学位になります。MBAを取得することは、経営戦略やマーケティング、財務、人事管理、ファイナンス、リーダーシップといった企業経営に関わる知識を体系的に習得したという証になるため、特に戦略コンサルとして従事する方や目指す方にお勧めです。
ただし、自学と試験だけで取得できる一般的な資格と異なり、MBAプログラムを履修する必要があるためスケジュールがかなり縛られること・受講費用が掛かることを考慮に入れ、自身のスケジュールにあったスクールの選定などが必要です。
取得にかかるコストや難易度が高い分、知名度も高く、MBA取得をすることは経営層レベルともコミュニケーションが取れるレベルであると対外的に認知してもらいやすくなるため、キャリアを築くのに有利な資格と言えます。
脚注:https://www.hub.hit-u.ac.jp/business-school/
社会保険労務士
社会保険労務士とは、社会保険労務士法に基づいた国家資格です。
資格を取得することで社会保険労務士として働くことができ、人事労務の専門家として企業の労務管理や社会保険・年金・助成金の申請などの相談に応じることができます。
この資格を活かすことで、従業員満足度を高める施策を提案したり、コンプライアンスを遵守した環境整備を行うことが可能です。スタートアップ企業や働き方改革を推進したい大手企業ではこうした知見を求められているケースが多く、人事コンサルを目指す方は、取得することで信頼やキャリアを築く足掛かりになる資格と言えます。
社労士の試験は年に1回、合格率は5~6%とこちらも難易度としては高い資格ですが、国家資格でもあるため取得価値は高く受験者数も増加傾向にあります。
脚注:https://www.shakaihokenroumushi.jp/
中小企業診断士
中小企業診断士は、日本で唯一の経営コンサルタント向け国家資格として、高い信頼性を誇ります。中小企業診断士は、中小企業の経営課題を診断・助言を行う専門家であり、経済産業大臣が登録する資格です。
中小企業診断士になると、中小企業の成長戦略の策定~具体的な経営計画を専門知識をもって支援する役割を担うため、戦略コンサルを目指す方にお勧めの資格です。
地域密着型のコンサルティング業務や、自治体の支援プロジェクトでの活躍が期待される一方で、資格取得の難易度も高く、学習時間の確保が求められます。しかし、合格後には中小企業診断士同士のネットワークを活用し、事業機会を広げることが可能です。
また、専門知識だけではなく、行政や金融機関とのパイプ役としてのスキルも求められる資格であり、クライアントの課題解決の伴奏支援的な役割を行えるようになります。
脚注:https://www.jf-cmca.jp//contents/002_c_shindanshiseido/001_what_shindanshi.html
行政書士
行政書士は行政書士法に基づく国家資格です。この資格は行政手続きに関する専門家としての知識が身につきます。具体的には、官公署に提出する書類の作成や提出手続きの代理などが行えるようになり、許認可・事実証明・行政不服申立て手続代理など、複雑な手続き周りを正しく行うためのサポートが可能になります。
コンサルタントとして行政書士の資格を持っている場合、中小企業が新たに事業を始める際の手続きや、外国人の雇用に伴うビザ申請などで活躍が期待されます。
この資格は、法務に関する知識を証明するだけでなく、ビジネスコンサルタントとしての信頼性を高める手段ともなります。行政手続の複雑化が進む中、本資格を有していることで、法改正や新たな規制が発令されても企業の手続きや業務方針に問題がないかなど、見落としがちかつ重要な部分のアドバイスをすることができるようになるため非常に重宝される人材となりうることが可能です。
脚注:https://www.gyosei.or.jp/info
税理士
税理士は、財務や税務に関する深い専門知識を活かし、企業の成長をサポートする役割を担います。特にM&Aや事業承継が増加する昨今では、適切な財務戦略を提供する専門家として注目されています。
この資格を取得することで、税務相談だけではなく税務代理・税務書類の作成なども行うことが可能になります。
企業の経営課題を解決するために、税務リスクの軽減や資金調達の支援を行うだけでなく、経営者に信頼されるパートナーとしての地位を築けます。一方で、資格取得には数年単位の学習が必要であり、受験科目の選定が成功へのカギとなります。
脚注:https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/
公認会計士
公認会計士というと監査などを中心に行う専門職のイメージが強くありますが、日本公認会計士協会では「監査」「会計」「税務」「コンサルティング」が行えるようになるといわれている資格になります。
公認会計士は、監査や財務報告に関する高い専門性を持ち、企業の信頼を支える重要な資格です。財務戦略の提案だけでなく、内部統制の改善やリスクマネジメントを担うことで、企業全体の健全な運営をサポートします。経営戦略の立案から組織再編、システムコンサルティングなど、経営全般にわたるコンサルティングを行えるようになるため、経営コンサルタントは勿論、他分野のコンサルタントも経営視点を持てるという意味合いにおいて、自身の視座を上げることが可能になります。
特に上場企業や国際企業では、公認会計士がプロジェクトの中心的な役割を果たすケースが多く、グローバル市場での活躍も期待されます。一方で、資格取得には高度な学習が必要であり、強い意志と継続力が求められます。
脚注:https://jicpa.or.jp/cpainfo/introduction/about/work/
証券アナリスト
証券アナリストは企業の価値を分析する人のことを指します。CMA資格というものを取得することで、一定以上の知識があると認められるもので、主に①企業財務、②資本市場、③M&A、についての知識を勉強することになります。
この資格を取得することで、企業の株価情報などをまとめたアナリストレポートの作成をすることができるようになり、会社の業績変化の兆しを捉える分析力や会社の価値を中長期的に捉える能力が身につくため、金融業界でのコンサルティング能力の証明になります。
特にM&Aを企業が行う際は専門のコンサルタントを入れることがほとんどのため需要も高く、扱う額も大きくなるので資格取得で得られる信頼性はキャリアアップに大きく影響します。
脚注:https://www.saa.or.jp/curriculum/pamphlet/pdf/for_student.pdf
司法書士
司法書士は、不動産取引や会社法務の分野で重要な役割を果たします。法的手続に関する専門知識を駆使し、企業や個人のトラブルを迅速かつ的確に解決します。特に、不動産登記や債権回収の場面では、信頼できるアドバイザーとして高い需要があります。
特に会社・法人登記や不動産登記は司法書士の独占業務となります。
この資格を取得することで、法律分野のコンサルティングスキルが証明され、クライアントからの信頼度が向上します。また、相続問題や遺言書作成のサポートを通じて、幅広いニーズに応えることが可能です。法務分野の知識を深めたい人にとって、司法書士は非常に有用な資格といえます。
脚注:https://www.shiho-shoshi.or.jp/about/business.html
コンサルファームでコンサルタントが習得しておくと便利な資格
コンサルタントとして活躍するためには、業務の幅を広げる資格を持つことが大きな強みとなります。特に、国際的なプロジェクトや高度なIT案件、複雑なプロジェクトマネジメントに関わる際には、資格が信頼性の証となり、クライアントへの説得力を高める要因にもなります。ここでは、コンサルファームで働くコンサルタントが実務で活用しやすい資格について解説します。
英語:TOEIC、TOEFL、IELTS
グローバルな案件では、英語力が必要不可欠です。特に、TOEICはビジネス英語のスキルを証明する資格として広く認知されています。一方で、TOEFLやIELTSは、海外市場の調査やグローバルチームとの協業など、国際的な環境での適応力を示す指標となります。
コンサルタントの案件では、海外常駐の案件だけではなく、企業の海外展開の支援や外資系企業の業務改善・クライアントの海外子会社とのやり取りなど、英語が必要とされる場面が数多くあります。
英語資格を持つことで、国際的なプロジェクトへの参加が容易になり、現地の資料や規制情報の収集がスムーズになります。英語でのプレゼンテーションや交渉能力・コミュニケーション能力を強化することで、クライアントへの提案の幅が大きく広がるでしょう。
英語系の各資格の違いは下記の通りです。
- TOEIC…ビジネス英語を測る目的の資格
- TOEFL…海外大学・大学院(特に北米)への進学を考えている方向け
- IELTS…海外大学・大学院への進学や移住を考えている方向け
IT:ITストラテジスト、システムアーキテクト
デジタルトランスフォーメーションの時代において、IT資格は特に重要です。IT関連の資格は種類も多く、案件や専門分野によって取るべき資格も変わってきます。
その中でもITストラテジストは、企業の経営戦略においてITを活用した基本戦略を策定・提案・推進できることができるようになるための資格であり、戦略コンサルタントやITコンサルタントに必要な知識が身につきます。
システムアーキテクトは、ITストラテジストからの提案を受けて、実際にシステムの設計~開発を主導するための資格です。高度IT人材として、戦略~開発までを一貫して知ることは1つのプロジェクトを完遂できるスキルを持つということになり高単価人材としての活躍を後押しします。
戦略や開発だけに特化した人材ではなく、ITプロジェクトの上流~下流まで監修できるということはクライアントからの信頼獲得に重要な素養であるとともに、キャリアに一貫性や説得力が出るため、この2つの資格を併せて取得することをおすすめします。
PMO:PMP、IPA
プロジェクトマネジメントのスキルを持つことは、コンサルタントにとって大きなアドバンテージです。PMPは、プロジェクト全体の計画、実行、リスク管理能力を証明する資格で、特に大型案件での信頼を得やすくなります。
また、IPAは、情報処理やIT関連プロジェクトに特化した知識を提供します。DX化が加速する中で、ITプロジェクトの管理や進行をスムーズに行うための基盤として、この資格が役立つ場面は多いでしょう。
目的別にコンサルタントにおすすめの資格を紹介
コンサルタントとしてのキャリアを目指す場合、自分の目的に合った資格を選ぶことが重要です。昇進を目指す場合、未経験からの転職を考える場合、あるいは独立を視野に入れる場合、それぞれの目的に応じて有効な資格があります。ここでは、具体的な目的別に役立つ資格と、その活用方法を解説します。
昇格・昇進に有利になる資格
昇進や昇格を目指す際には、専門性の高さとリーダーシップを示す資格が有効です。MBAは、経営全般に対する深い理解を証明し、経営戦略や財務管理を俯瞰的に考える力を身につけることができます。これにより、経営層との議論で信頼を得ることが可能です。
また、公認会計士資格は、財務や税務に関する高度な専門性を示します。数字に基づいた論理的な提案を行うことで、プロジェクトの信頼性が向上します。一方、PMP資格を取得することで、プロジェクトの推進力とマネジメント力を証明し、チームリーダーとしての役割を担う機会が増えるでしょう。
どの資格も、単なる知識の習得にとどまらず、実務で活かすことが重要です。例えば、経営戦略に基づく提案や財務分析の結果を具体的な施策に結び付ける力が、昇格の鍵となります。
未経験からの転職に有利な資格
異業種からコンサルタントを目指す場合は、専門性を証明する資格が役立ちます。IT分野であれば、基本情報技術者や応用情報技術者の資格が、技術的な理解を示す証明となります。これにより、システム導入やデジタル戦略のプロジェクトに参画する道が開かれるでしょう。
財務や会計の知識を補う場合、公認会計士や簿記資格が転職活動を後押しします。企業の財務状況を分析し、改善策を提案する能力をアピールできます。
専門知識が不十分な場合でも、資格取得を通じて基礎を固めることで、コンサルタントとしての可能性を広げることができます。このように、自分の強みを明確にし、足りない部分を資格で補うことが転職成功への近道となるでしょう。
独立に向いている資格
独立を目指す場合は、専門知識と実務経験を組み合わせた資格が効果的です。税理士資格は、企業の税務戦略や申告業務を支援し、顧客との信頼関係を構築する大きな武器となります。また、社会保険労務士は、労務管理や人事制度の見直しを通じて、企業の健全な成長をサポートできます。
行政書士資格を持つことで、法人設立や許認可申請といった手続きの代行が可能になります。これにより、中小企業や個人事業主との契約が増え、収益の安定化に繋がるでしょう。
独立後の成功には、資格の取得だけでなく、それをどのように活用するかが重要です。高度な専門性と信頼性を兼ね備えたコンサルタントは、クライアントにとって欠かせないパートナーとなります。
「未経験からコンサルタントへの転職する選考対策やポイント」についても解説しているので、コンサルタントへ転職を考えている人はご覧ください。
まとめ
コンサルタントとして成功するために資格は必須ではありませんが、取得することで専門性を示し、信頼性やキャリアの選択肢を広げる大きな利点があります。特に、自分の強みを補完したり、目指す分野での知識を深めるために資格を活用することが効果的です。
キャリアの目標や方向性に応じて、価値ある資格を選び、実務に活かすことで、クライアントへの貢献度をさらに高めることができるでしょう。