近年「AIコンサルタント」という職種が注目されています。
生成AIやデータ活用が急速に広がる中、専門性のある職に就きたい方にとって、AI分野の知識とビジネススキルを融合したキャリアは魅力的に映るはずです。
とはいえ、「そもそもAIコンサルタントとは何をする仕事?」「未経験から目指すにはどうすればいい?」など、実態がつかめず不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、AIコンサルタントの仕事内容や年収、必要なスキルまで網羅的に解説します。
今後のキャリアを考えるうえで、AI領域に関わる道を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
AIコンサルタントとは?注目されている理由も解説
AIコンサルタントとは、企業のAI導入・活用を支援する専門家です。
ビジネス課題を整理し、AIによる解決方法を設計・提案・実装支援する役割を担います。
たとえば、小売業での在庫最適化や製造業における需要予測など、業界ごとの業務課題をテクノロジーと結びつけて解決します。
AIコンサルタントが今、特に注目されている理由は以下の通りです。
- DXの加速
- 生成AIの台頭と企業ニーズの拡大
- 技術とビジネスの翻訳者としての価値
経済産業省の調査によれば、2025年までに多くの日本企業がレガシーシステム(※1)の刷新やデータ利活用(※2)を迫られています。
※1:古い技術や仕組みで構築されたシステムのこと
※2:データを収集・分析し、業務や意思決定に活用することで、新しい価値創造を実現する取り組みのこと
これに伴い、「デジタル戦略を設計し、現場へ導入できる人材」が強く求められており、AIコンサルタントは橋渡し役として不可欠な存在です。
また、ChatGPTをはじめとした生成AIの実用化により、多くの企業がAIをどう導入すれば自社にメリットがあるのかを模索しています。
さらにAI技術は急速に進化していますが、エンジニアと経営層・業務担当者との間には認識のギャップがあるため、AIコンサルタントが技術を成果に変える役割を果たします。
こうした背景から、AIコンサルタントは将来性が高く、かつ専門性のある職種として注目を集めているのです。
※参照:経済産業省
IT・DXコンサルタントの違い
AIコンサルタントと混同されやすい職種に「ITコンサルタント」や「DXコンサルタント」があります。
それぞれの役割には重なる部分もありますが、焦点を当てる領域や支援範囲に明確な違いがあります。
以下の表は、主な違いを比較したものです。
項目 | 主な目的 | 対象領域 | 求められる知識 | 想定クライアント |
---|---|---|---|---|
AIコンサルタント | AI技術を用いた課題解決・業務改善 | ・機械学習 ・自然言語処理 ・画像認識 ・生成AI など | AI・データサイエンス+業務理解 | ・AI活用を模索する事業会社 ・経営層 ・DX部門 |
ITコンサルタント | 情報システムの導入・最適化支援 | ・ERP ・CRM ・インフラ など | ITインフラ、アーキテクチャ設計 | ・情報システム部門 ・ITマネジメント層 |
DXコンサルタント | 組織変革・ビジネスモデル転換の支援 | ・業務 ・組織 ・人材 ・文化 など | 戦略立案・チェンジマネジメント | ・経営企画部門 ・役員クラス |
AIコンサルタントはAIに特化しており、ITや経営の観点を持ちつつも、機械学習や自然言語処理などの具体的な技術と向き合うポジションです。
これに対し、ITコンサルはシステム全体の最適化が主軸、DXコンサルは組織変革の推進に重点が置かれます。
AIコンサルタントの仕事内容
以下では、AIコンサルタントが実際に担う主な業務を4つのフェーズに分けて解説します。
AIコンサルタントの仕事は、単に技術的なアドバイスをするだけではありません。
企業が抱える課題を見極め、AI技術でどのように解決できるかを設計し、実際に導入・運用・改善までを一貫して支援するのが特徴です。
現状分析・課題抽出
AIコンサルタントの最初の役割は、クライアント企業の現状を的確に把握し、解決すべき課題を明確にすることです。
具体的には、以下のような業務が含まれます。
- ヒアリングを通じた業務フローの把握
- 経営層・現場担当者とのワークショップ実施
- 業務データやKPIの収集・分析
- ボトルネックや非効率なプロセスの特定
「そもそもAIを導入する必要があるのか」「導入するならどこに活用すべきか」を見極める判断力が必要です。
技術の押し売りではなく、ビジネス課題の本質を掘り下げることがAIコンサルタントに求められます。
AI戦略の立案・提案
課題が明確になった後は、AIをどのように活用して解決に導くかを戦略として設計し、クライアントに提案します。
技術的知識だけでなく、経営視点や実行可能性も加味した判断が不可欠です。
主な業務は以下の通りです。
- AI適用領域の選定(予測、分類、異常検知など)
- PoC(概念実証)の設計とロードマップ策定
- システム要件や外部ベンダーの選定支援
- 経営層に向けた意思決定資料の作成・プレゼン
戦略立案の際には、費用対効果・データの可用性・既存業務への影響など複数の要素を総合的に検討します。
つまり、技術とビジネスをつなぐ翻訳者としての役割が強く求められます。
導入・運営支援
戦略が承認された後は、AIシステムの導入に向けた支援が始まります。
実装そのものはベンダーやエンジニアが担うこともありますが、AIコンサルタントはその過程をリード・マネジメントする立場です。
関与する内容の例
- 外部開発パートナーとの要件定義調整
- 社内関係者との合意形成・説明支援
- データ前処理やモデル構築のレビュー
- 業務プロセスへのAI統合・業務フロー設計
どれほど高度なモデルでも、現場で使われなければ意味がないため、技術を現場に落とし込む力が必要です。
導入プロセス全体を俯瞰し、現場と技術の橋渡しを担うのがAIコンサルタントの役割となります。
効果測定・改善提案
AI導入はゴールではなく、その後の運用と改善が成果に直結します。
AIコンサルタントは、導入後も効果検証や継続的な改善提案を行い、クライアントと長期的な関係性を築きます。
主な業務は以下の通りです。
- モデルの精度・業務効率の定量評価
- 期待されたROI(投資対効果)の検証
- 改善サイクル(PDCA)を回すための提案
- 他業務・他部門への展開可否の評価
効果測定は、AIが実際にビジネス価値を生んでいるかを可視化する工程です。
クライアントの納得感を高め、次の導入や社内展開を促すうえでも重要な役割を果たします。
AIコンサルタントの年収相場
前提として、AIコンサルタントの年収は、スキル・経験年数・所属企業の規模によって幅があります。
しかし、国内のIT系コンサルティング職種の中でも比較的高い水準である傾向があり、目安は以下の通りです。
経験レベル | 年収の目安 |
---|---|
未経験〜ジュニア層(0〜2年) | 約400万〜700万円 |
ミドル層(3〜7年) | 約700万〜1100万円 |
シニア層・マネージャークラス | 約1200万〜1800万円以上 |
また、年収1000万円以上のAI求人が3年前より約3.5倍になっていることも分かっており、今後もAI人材のニーズは継続されると考えられています。
※参照:ビズリーチ
AIコンサルタントに求められるスキルや適性
以下では、AIコンサルタントに求められるスキルを2つの側面からご紹介します。
技術知識だけでなく、クライアントと対話しながら課題を見つけ、最適なソリューションを提案する能力が必要です。
技術面で求められるスキル
AIコンサルタントには、以下のような最低限の技術理解と応用力が必要です。
- クラウドサービスの基礎知識
- データ分析の基本
- 機械学習・生成AIの原理理解
- API連携やPoC設計に関する知識
AIはクラウド上で実装・運用されることが多いため、アーキテクチャやサービス選定の基本理解は不可欠です。
またAIモデルはデータに依存するので、データの意味や構造を理解し、前処理や可視化の流れを知っておくことも重要です。
さらに、外部のAIサービスや社内システムとどのように連携するか試行的な実装方法についての理解も、現場では重宝されます。
これらはすべて未経験から学習可能であり、文系出身者でもステップを踏めば十分に習得可能です。
コンサルティング面で求められるスキル
AI導入は経営課題の解決手段であるため、ビジネスを理解し、適切なコミュニケーションが取れる力も不可欠です。
特に以下は、AIコンサルタントにとって重要なスキルとなります。
- 論理的思考力(ロジカルシンキング)
- 課題発見力とヒアリング力
- ドキュメンテーションと資料作成スキル
- ファシリテーション能力
- ビジネス理解と業界知識
複雑な課題を整理し、原因と対策を分解して伝える力はあらゆるフェーズで必要です。
表面的なニーズではなく、本質的な問題を見つけるための質問力や観察力が求められます。
また、クライアントや開発パートナーとの会議・調整の場を円滑に進める力も重要です。
他業種での経験や日常業務でも磨くことができるため、異業界出身者にとっても再現性の高い能力といえます。
未経験からAIコンサルタントになる方法を5ステップで解説
AIコンサルタントは高度な職種に見えるかもしれませんが、未経験からの転職・キャリアチェンジも増えています。
以下では、実際にAIコンサルタントを目指すにあたり、未経験者が取るべき行動を5つのステップに分けて解説します。
AIコンサルタントは、未経験からでも段階的な努力と戦略的な行動によって十分目指せる職種です。
一足飛びを狙うのではなく、現実的なスキル構築と実践機会の積み重ねが重要となります。
①AI・データ分析の基本を学ぶ
AIコンサルタントにとって、AI技術そのものの詳細な実装スキルは必ずしも必須ではありません。
しかし、クライアントに対してAIで何ができるかを説明するには、基礎知識を体系的に理解しておくことが重要です。
まずは以下のような内容から学習を始めるのがおすすめです。
- 機械学習・ディープラーニングの基本構造
- データの前処理、特徴量、評価指標などの分析基礎
- ChatGPTや画像認識など、代表的なAI活用事例の理解
- PythonやSQLなどの基礎構文(分析補助レベル)
これらは無料のオンライン講座やMOOCで習得可能です。
②資格取得を目指す
関連資格の取得は、未経験者が知識を証明する手段として有効です。
AIコンサルタントに特化した国家資格は存在しませんが、一定の評価を得られる民間資格があります。
代表的な資格は以下の通りです。
資格名 | 特徴 |
---|---|
G検定 | AI・機械学習の基礎知識と倫理に関する検定 AIコンサルを目指す人の登竜門的存在 |
E資格 | エンジニア向けのより高度な資格 技術知識を深めたい人には有効 |
AWS認定クラウド プラクティショナー | AIをクラウドで実装する基礎知識を示せる資格 |
統計検定2級以上 | データリテラシーの証明に役立つ 分析や可視化を支援する立場として有効 |
資格はあくまで「スタート地点の証明」に過ぎませんが、転職活動の入口や信頼獲得には大きく貢献します。
③実践経験を積む
知識だけでAIコンサルタントとしての信頼は得にくいため、現実のプロジェクトでの経験やアウトプットが重要になります。
とはいえ、未経験者がいきなりAI案件を担当するのは難しいので、段階的な方法が必要です。
有効な手段
- 個人でコンペに参加し、分析プロセスを体験
- Github上でポートフォリオを公開
- ノーコードツールを使って模擬分析
- 自社内でのデータ活用プロジェクトに手を挙げる
実務経験がない場合でも「AIを活用して業務に貢献した」という証拠となり、ポテンシャル評価を受けやすくなります。
④スクールや学習サービスで補完する
独学に限界を感じた場合や体系的に学びたい場合は、スクールやオンライン学習サービスの活用も選択肢になります。
時間とお金の投資が必要になりますが、実務に直結するスキルや転職支援を受けられることもあります。
代表的なサービス例
サービス名 | 特徴 |
---|---|
キカガク(AIコース) | G検定対応+実践形式の内容が充実 |
Aidemy Premium | 文系未経験者にも配慮したコース構成 |
また、大学や社会人向けのリカレント講座でもAIリテラシー教育が行われており、キャリアの土台づくりに有効です。
⑤転職・副業でキャリアをスタートする
一定の学習とアウトプットを経たら、実際の職場での経験を積むことが何よりの成長要因になります。
いきなりコンサルファームを目指すのが難しい場合でも、AI関連の業務を経験できるポジションを選ぶのが現実的です。
おすすめのキャリアスタート例
- SIerやIT企業の「データ活用担当」「DX推進担当」
- 社内業務改善チーム(AIツール導入を担うポジション)
- フリーランスでAIライティングやリサーチの副業から始める
- コンサルタント志望で未経験可のポテンシャル枠に応募
また、転職エージェントやAI特化型求人サイトなどの活用も有効です。
AIコンサルタントのキャリアパス
以下では、AIコンサルタントの代表的なキャリアパスを紹介します。
AIコンサルタントとしてのキャリアは、特定のルートに限定されるものではありません。
技術とビジネスの両面に関与する職種であるため、複数の進路があり、自分の強みや志向に応じたキャリア設計が可能です。
企業のAI部門で働く
AIコンサルタントとしてのスキルを活かし、一般企業の社内AI推進チームやDX部門に所属するケースです。
特に、以下のような業務データを多く保有する企業では、AIを活用した業務改革が進められています。
- 製造業
- 金融
- 小売
- 物流
このような環境では、以下のような役割が期待されます。
- 社内業務のAI活用提案
(予測モデル、需要予測、画像認識など) - 外部ベンダーとの調整役
(要件定義・進行管理) - 社内のAIリテラシー向上活動
(研修・ガイドライン作成)
社内に長期的に関与できるため、業務知識を深めながらAI活用を根付かせる視点が求められます。
安定志向の方や特定業界へのこだわりがある方に適した選択肢です。
コンサルファームで活躍する
外資系・日系を問わず、戦略系・IT系のコンサルティングファームでは、AI・データ活用をテーマにしたプロジェクトが急増しています。
複数のクライアントに対し、戦略立案から実行支援までのプロジェクト単位で関与することが可能です。
想定される業務
- DX戦略立案におけるAI導入方針の策定
- 経営層向けのPoC(概念実証)やROI評価
- ベンダー・エンジニアとの協業によるAI導入支援
短期間でさまざまな業界・課題に触れられるほか、成果主義・高年収の傾向があります。
一方で、プロジェクトのスピード感や成果プレッシャーも大きいため、高い自走力と論理力が求められるでしょう。
独立・フリーランスで働く
経験を積んだ後は、独立してフリーランスのAIコンサルタントとして活動する道もあります。
近年では、特定領域に強みを持つ専門家や、ベンチャー支援を行う人材がフリーランスで活躍する事例も増えています。
フリーランスAIコンサルタントとしての主な働き方は以下の通りです。
- 中小企業やスタートアップ向けのAI導入アドバイザリー
- データ整備やベンダー選定に関するコンサルティング
- 複業スタイルでのリモート案件(週2〜3日稼働)
報酬はスキルと実績に比例するため、月100万以上の高単価案件も狙えますが、営業力や継続契約の構築が課題となります。
柔軟な働き方や専門性の深掘りを重視する方には魅力的な選択肢です。
AIコンサルタントに将来性はある?なくなる?
「AIの仕事はAIに奪われるのでは?」という疑問を持つ方も少なくありません。
しかし、AIコンサルタントという職種に関しては、現時点ではむしろ高い将来性があると見られています。
その理由は、以下のような業務特性にあります。
- 業務が高度に非定型である
- 経営層との対話・意思決定支援が含まれる
- AI利活用そのものが拡大している
AIコンサルタントの業務は、クライアントの事業環境や課題に応じて提案をカスタマイズする非定型・非自動的な業務です。
ルール化や定型処理が困難なため、現状のAIでは代替が難しい領域とされています。
また、戦略提案や経営判断に関わるため、文脈理解・共感・交渉といった人間特有のスキルが不可欠です。
さらにAIを導入したい企業は増え続けている一方で、どのように導入すべきかを示す人材は不足しています。
経済産業省の報告でも、AI人材不足が社会課題として取り上げられており、需要は今後も継続すると考えられるでしょう。
※参照:経済産業省
AIコンサルタントの求人動向
近年、AI技術を取り巻く環境の変化にともない、AIコンサルタントに対する求人ニーズは急速に高まっています。
特に2023年以降は、生成AIやデータ利活用の本格化により、業界を問わず人材の需要が拡大しています。
リクルートが2024年下半期に発表した「転職市場動向レポート」では、AI関連求人が18業界に拡大していることが明らかになりました。
製造・金融・小売などの業務データを多く保有する業界において、AI活用を推進するポジションとしてAIコンサルタントの採用が活発化しています。
また、グローバルでもAI分野の求人増加は顕著であり、SoftBankやSalesforceなどもAI戦略に関与する人材を積極採用しています。
さらに、2025年現在では、ポテンシャル採用や副業・業務委託ベースでの案件募集も一部確認されています。
AIコンサルタントの求人市場は国内外で確実に拡大しているため、今後の動向に注目しながら早期に準備を始めることで、チャンスをつかむことができるでしょう。
※参照:Business Insider
AIコンサルタントは未来を創るキャリア
AIコンサルタントは、社会や企業の未来を形づくる重要な役割を担うキャリアです。
テクノロジーの進化によって多くの職種が再定義される中で、AIをいかにビジネスに活用し、倫理的・実務的なバランスを取って導入できるかは今後ますます重要なテーマになります。
その最前線に立つAIコンサルタントには、次のような魅力があります。
- 多様な業界に影響を与える仕事
- 専門性と柔軟性を両立できるキャリア
- 変化に強い、再現性のあるスキルが身につく
AIコンサルタントという選択肢は、将来性・専門性・社会貢献性の三拍子がそろった、極めて現代的なキャリアです。
学びながら成長できるこの領域に一歩踏み出す価値は十分にあるといえるでしょう。